iPS細胞臨床実用への先駆者、理化学研究所・高橋政代先生

最近、非常に気になる一人の科学者がいる。理化学研究所・多細胞システム形成研究センターの高橋政代先生だ。彼女はノーベル医学・生理学賞を受賞された山中伸弥教授が発見したiPS細胞を初めて臨床に応用した、眼科を専門とする医学者だ。

山中先生がiPS細胞を発見された時は、その成果は基礎科学の成果としての意味合いが近かった。しかしその後、iPS細胞の研究は基礎から臨床などの応用へ軸足を移しつつ、すそ野は非常に広がっていった。僕は医学の専門ではないのでその世界のことは詳しくはわからないが、医学の基礎研究を応用して臨床までもっていくには、研究的にも金銭的にも非常に膨大な労力が必要で、非常に困難な道のりであるらしいということは、いろいろな情報から聞こえてくる。

2014年、高橋政代先生は、眼の網膜に関連する「加齢黄斑変性」という病気の治療にiPS細胞から作った組織を移植し、世界で初めてiPS細胞の臨床に成功した。その成功はiPS研究の応用の到達点ではなく、スタートである。この高橋先生の臨床の成否はこれからの全てのiPS細胞の臨床の行方を左右するものであり、高橋先生へのプレッシャーも並大抵なものではなかったようだ。

そして何より忘れてはならないことは、iPSは「日本発」の研究・技術であること。山中先生が発見されたiPS細胞の研究を、世界で初めて「日本」で臨床に成功したことは、日本の医療研究・臨床、そして産業にとって非常に大きな意味がある。

ところで、高橋政代先生の旦那さんも京都大学iPS細胞研究所で教授をされている医学者である。夫婦そろって日本の、いや世界のiPS細胞研究をリードされているのであろう。

医学者と言えば機械的に患者と接しているというイメージを持つ人もいるかもしれないが、ある記事によると高橋政代先生は非常に感情的な方で、自分の研究のことを話すときに患者さんのことを思い出し、途中で涙を流すこともあるそうだ。そういえば山中伸弥先生も非常に患者想いの研究者である。このような人間味豊かな研究者が、基礎研究を本当に役に立つ臨床応用へと発展させているのかもしれない。

僕は度々、科学というものに対して、役に立つかどうかという物差しだけではなく、「科学的価値」というもので評価することが大事だと繰り返し述べてきた。しかし高橋先生、山中先生のような人間の命さえも救ってしまう「究極に役に立つ科学」には、底知れぬ価値を感じてしまう。

これからのiPS研究の臨床の成功を祈るばかりである。

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