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連日のノーベル賞受賞、梶田隆章氏。昨日の大村氏とは思想の違う研究で。

前日の大村智氏のノーベル医学・生理学賞受賞に続き、10月6日、梶田隆章東京大学宇宙線研究所所長がノーベル物理学賞を受賞された。前日の大村氏に続き、梶田氏にも一国民としておめでとうという気持ちを送りたい。

ところで前日の僕のブログで、医学・生理学賞の大村氏の研究思想に対して、科学研究には大村氏とは異なった思想・視点も大事だと述べた。そして今日の梶田氏の物理学賞の受賞、そこで梶田氏は前日僕が述べたことをそのまま表現してくれた。現在の僕がいくら主張しても全然影響力はないが、ノーベル賞を受賞された梶田氏が発言すると非常に説得力があるだろう。

具体的には、科学は役に立つものだけではなく、役に立たないもの、実学ではないものに真の科学的価値があるということだ。そしてまさしく梶田氏の研究がそれにあたる。梶田氏の研究は、宇宙線の研究によりニュートリノ振動という現象を観測され、ニュートリノに質量が発見されたというものだ。分野としては素粒子物理学にあたるが、2008年の南部・小林・益川氏らの「素粒子論」に対し、今回の梶田氏は2002年の小柴氏の流れをくむ「素粒子実験」である。

今回の梶田氏の受賞に際しての発言は、僕自身も非常にうれしいものであった。梶田氏は

「すぐに役に立つ研究ではなく、知の地平線を広げるような研究だ」

ということを話されていた。僕が前日のブログで述べたことはまさしくこのことである。梶田氏の発言によって少しでもそのような科学思想の重要性が国民に浸透すれば非常にうれしい。

二日続けてのノーベル賞日本人受賞、気は早いが次の化学賞で「三日続けて」となるかどうかが楽しみである。そして文学賞では村上春樹氏が有力候補とされている。この時期は日本人にとって恒例の楽しみな季節となりつつある。

大村智氏、ノーベル賞受賞。大村氏の信念は素晴らしいが、科学には別の視点も必要だ

10月5日、ノーベル医学・生理学賞が発表され、北里大学の大村智特別栄誉教授が受賞された。何はともあれ、一国民としておめでとうという気持ちを送りたい。

大村氏の科学に対する信念は非常に素晴らしい。大村氏は、科学は人の役に立てなければいけない、実学でなければいけないということを非常に強調されていた。それはそれでもっともかもしれない。しかし変人である僕はその信念に反発を感じるのである。

僕は数理物理と言う分野を研究してきたが、なぜ数理物理を選んだのか?それは一番は興味があり面白さを感じたからであることは言うまでもないが、それとは別に「役に立たないから、そして実学からはほど遠いから」だ。しかしこのような思想はほとんどの人に理解されない。役に立つ素晴らしさを理解するのは簡単だが、役に立たないものの素晴らしさは説明をしないと理解してもらえない。説明をしても理解されないかもしれない。

400年ほど前のニュートンの時代、当時、万有引力の法則が役に立つなどと理解した人はどれだけいるであろうか。20世紀の初めの量子論、そして相対性理論が人の助けになると想像した人がどれだけいるだろうか。おそらく全くと言っていいほどいないだろう。しかし万有引力の法則も、量子論も、相対論も科学史に輝く金字塔だ。なぜ役に立たない(と当時思われていた)これらの理論がそんなにも偉大なのか?それは役に立たないからである。もう少し詳しく言えば、役に立たないのに取り組むべき価値のあるほど重要な理論なのである。分野にもよるだろうが、数学や物理では役に立てるために発明したものよりも、役に立つかどうかということを度外視して打ち立てた理論の方が圧倒的に重要なことが多い。

とはいえ、当時役立てることからはほど遠かった量子論は、現在の科学技術、人々の周りで最も中心的な役割を担っている。現在最も役立っている理論は量子論だといっても過言ではない。相対論も現在ではカーナビなどの技術に取り入れられている。

役立てるための短期的な科学技術ももちろん大事だが、役立つかどうかなどを度外視して真に重要な理論を研究している科学者たちに対しても、周りの人は見守ってほしいものである。それが結果的に科学立国として大国になるために必要な資質である。

津波の原因は地震だけではなかった。想定外災害時代に突入した日本

10月4日(日)、NHKで「巨大災害」という番組を観た。いま注目されている災害の一つに、「カルデラ噴火」がある。カルデラ噴火は普通の噴火とは規模も質も全く違い、桁違いの巨大災害をもたらす。鹿児島の桜島では、普通の噴火は桜島の火口から噴火するが、カルデラ噴火では桜島が浮かんでいる鹿児島湾全体が噴火口となる。

カルデラ噴火は鹿児島湾だけでない。阿蘇山などをはじめ、北海道から鹿児島まで日本にはカルデラが多数存在する。日本でカルデラ噴火が起きる頻度は平均すると6500年に一度だそうだ。

そしてこのブログのタイトルでもある津波についてだが、津波は地震の専売特許ではないという。驚くことに火山の噴火でも津波は起こることがわかっている。厳密に言うと、海底噴火が原因の津波である。鹿児島湾では地上にある桜島だけではなく、鹿児島湾内の海底でも噴火が起きるという。そうなれば鹿児島湾沿岸では10メートルにもなる巨大津波が襲ってくる。

日本に住んでいる限り、巨大自然災害からは縁が切れないといっても過言ではない。そして東日本大震災から学んだこと、「想定外」はもう許されない。想定外はいつ起こってもおかしくないのである。従来ならカルデラ噴火などは想定外だったかもしれない。海底噴火による津波が起これば想定外と言われたかもしれない。しかし想定外が当たり前になった現在、もう想定外は存在しない。

日本人には自然災害に対してもう想定外と口にすることはできなくなってしまった。頭の片隅に、そのような想定しえないことが起きる可能性というものについて気を留めておく必要がある。

侮ってはいけないチリ地震津波

17日早朝、チリ沿岸でマグニチュード8.3の大地震が起こり、18日早朝、日本でも津波が観測された。チリと言えば日本から地球の裏側にあると言っていいほど遠く離れているが、なぜこのような離れたところの地震による津波が日本まで来るのだろうと疑問に思う人が多くいるかもしれない。さらに太平洋のど真ん中にあるハワイはもっと大きな津波が来るのではと思うかもしれない。しかし実際はハワイでの津波の高さは日本の半分ほどである。それはなぜか。

ポイントはチリが日本の裏側にあるということだ。チリで起きた津波はそこをを中心にして四方八方に散っていく。しかし地球儀を思い出すとわかるように、地球の裏側から四方に直線をのばしてほしい。一度は遠く離れるが、地球の裏側でこの四本の直線は出会うことになることがわかる。チリ地震津波も同じだ、チリからいったん離れた津波は地球の裏側の日本でまた合わさって再び高くなるのである。

約半世紀ほど前に起きたチリ地震(これはマグニチュード9.5という巨大なものであった)の時は、日本にも6メートルもの津波をもたらし、日本の太平洋沿岸に大きな被害をもたらした。この時もハワイでの高さは約半分である。

この様に地球の裏側での地震は決して侮ってはいけない。地球の裏側だから危険なのである。今回の津波は大きくはなかったが、日本は常に津波の危険性をはらんでいることを忘れてはいけない。

レクサスの浮上するスケボー

最近レクサスのCMで登場している、空飛ぶ スケボーをご存じだろうか?この空飛ぶスケボー、コンピューターグラフィック(CG)などではなく、本当に宙に浮いているのだ。正式な名前は「ホバークラフト」と言うらしいが、液体窒素で超伝導体を作り、磁気浮上技術で地面を、あるいは海面上を滑るように動いている。リニアモーターカーに近い仕組みとでも言えばいいだろうか。

物理をやっている僕も超伝導体(物性分野)には今一つ詳しくないので、原理を理論的に厳密に理解することはできないが、この未来のにおいがプンプンする乗り物にはかなり興味をそそられる。これはレクサスの研究チームが開発したもので、さすが日本一の巨大企業の技術力だと感心させられる。

このホバークラフトは本来の事業とは全くと言っていいほど関係なく、このようなことに取り組める技術的・金銭的な余裕は、日本の産業・技術のさらなる発展を促すことになるだろう。将来の革新的ブレークスルーはこのような研究から生まれてくるものだ。

トヨタは世界に先駆けて燃料電池自動車の実用化にも成功した。本来の事業の発展にも抜かりがない。もちろん全ての企業がこのホバークラフトのような未来的研究に取り組めるわけではないが、いま日本の景気が上向きになる中、このような企業が少しでも増えると、日本の産業、そして技術科学界も非常に面白い、エキサイティングな世界になるであろう。

桜島、大規模噴火の予兆か

桜島の活動がかなり活発になり、大規模噴火が起きる可能性が高いと発表された。予兆とは火山性地震・山体膨張などである。桜島は普段から年に千回以上のペースで火山活動が起きているが、今回の火山活動は気象庁の観測開始以来最大のものであるらしい。余談だが、僕が鹿児島に行ったとき、路面電車の中には火山灰を避けるために貸し出す傘が数本車内に準備されていた。鹿児島市民にとっては火山活動は生活の一部なのであろう。

ところで日本にはカルデラと呼ばれる巨大な火口がいくつもある。その中でも特に有名なのが阿蘇カルデラであるが、実は鹿児島の桜島も阿蘇に匹敵するくらいのカルデラなのである。桜島の頂上にある火口のことではない。桜島の浮かぶ鹿児島の湾の内部全てが実は姶良カルデラと呼ばれる巨大カルデラなのである。桜島は姶良カルデラの中に浮かぶ小さな山に過ぎない。今回の桜島の噴火は桜島の火口からの噴火と思われるが、数万年に一度くらいの割合でカルデラ全体からの噴火が起きることがある。いわゆる超巨大カルデラ噴火である。それは富士山の噴火の比ではないくらい巨大なものだ。超巨大カルデラ噴火が起きれば、九州はほぼ全滅すると言われている。

ともあれ、桜島の活動が人的被害のないレベルであることを祈るが、日本は火山・地震とも世界でもまれにみる地学的災害大国であり、常にその予兆を監視することを怠ることができない。

巨星散る・南部陽一郎博士

ノーベル賞物理学者、南部陽一郎氏が死去したことが明らかになった。94歳だった。

南部氏に関する俗的な話題はもちろんノーベル物理学賞を受賞したことに尽きるが、そのことを表現するときに「日本人物理学者」と表現すべきかどうかが議論になる。南部氏は東大卒業後、大阪市立大学で職に就いた後アメリカに渡り、そのままアメリカを研究拠点とし、アメリカ国籍を取得している。すなわち国籍上はアメリカ人なのである。日本生まれのアメリカ人と言う方が正確である。このことについては日本としては名誉なことではない。何しろ超一流物理学者が日米の研究環境を比較してアメリカを選択し、日本を捨てたわけであるから。異能流出である。

南部氏の物理学的な業績は多岐にわたり、広く深いものである。南部氏を表現するときによく使われるのが「時代を先取りしすぎた」という言葉だ。南部氏の研究は数十年後のスタンダードになっている。

僕が物理の勉強において初めて南部博士の名前に触れたのは、場の量子論の「南部・ヨナ-ラシーニョ模型」だ。南部氏の業績は、博士の代名詞ともいえる「自発的対称性の破れ」や「南部-ゴールドストン定理」をはじめ、どれをとっても重要なものばかりだ。最近流行りの超弦理論(超ひも理論)ももとをただせば、「南部-後藤のひも仮説」にたどり着く。素粒子論を学ぶ者にとって南部理論は必須だ。

南部氏は一般向けの書物も書いている。講談社ブルーバックスシリーズの「クォーク」という書物だ。これはブルーバックスの中でもベストセラーで、広く一般市民に親しまれている。

今、僕の机上の本棚に、「BROKEN  SYMMETRY , Selected Paper of Y.Nambu」という本がある。南部博士の論文集である。僕が昔、KEK(高エネルギー加速器研究機構)での研究会に参加した時に、途中の東京の本屋さんで買った本だ。恥ずかしながら、深く読んだとは言えないのだが。論文集が出版されるのは一流物理学者の証だ。

やはり南部博士の話題で、一般市民の一番の興味はノーベル賞であるので、ノーベル賞の話題で終わることにする。2008年のノーベル物理学賞は南部博士・益川敏英博士・小林誠博士の日本人トリプル受賞であった。しかし三者三分の一ではなく、南部氏が二分の一、益川氏・小林氏がそれぞれ四分の一ずつである。賞金もそのように分配される。単純に言えば、南部氏のノーベル賞は、益川氏・小林氏の二倍の価値があるということである。

南部博士の冥福をお祈りいたします。

小保方氏とは何だったのか

最近、STAP細胞騒動の張本人小保方氏が論文を雑誌に載せるのにかかった60万円を理研に返却したという報道があった。この騒動が60万円で済むわけがない。理研としても「形として」ということであろう。一言で言えば「ポーズ」である。

正しいことを証明することはできても、間違ったことを証明するのは意外と難しいものだ。小保方氏の疑惑についても99%嘘だと思っていても残りの1%はどうだ、と言うことになる。

数学ではこれは意外と簡単だ。理論が正しければ正しい、間違いがあれば正しくないということである。とは言ってもアンドリュー・ワイルズがフェルマーの大定理の証明論文を提出した時には、数グループに分担した検証グループが1年以上かけて判定した。とはいえ、このような例は数学でも例外的な部類に入る。

話は小保方氏に戻るが、多くの若手研究者は研究ポストに就こうと必死に努力している。その中でも正規のポストに就けるのは一部だ。時間もかかる。お金もかかる。小保方氏は理研の正規のポストに就き、年収は1000万円だったと言われている。記者会見の時には立派な指輪が話題になった。今考えると本当に強い憤りを感じる。

研究者として成功するには非常に困難ないばらの道を歩まなければならない。その途中で自殺する研究者も多いと言われている。小保方氏への社会の対応と、研究者への厳しい試練双方に何ともやるせない気持ちを感じてしまう。

最近立て続けに起きる火山噴火について

ここ最近、日本列島各地で火山の噴火が立て続けに起きている。西之島での海底噴火では陸地の拡大が続き注目度も大きく、これからの行方が気になる。ここ数日では箱根山の小規模噴火が話題になっている。僕は地学の専門家ではないので詳しいことは判断できないが、やはり気になるのは地震と火山の関係、東日本大震災との関連、そして一番気になるのはやはり富士山の噴火ではないだろうか。

今、日本列島は地殻変動活動期に入っていると言われる。その幕開けが東日本大震災だ。しかしそもそもそのような活動期なるものが科学的に存在するかどうかは疑問だ。科学的にそのような活動期に入ったというよりも、地震噴火が頻繁に起きているから活動期だと言っているだけに思える。

そして今、富士山の噴火と同等以上に注目を浴びているのが南海トラフ地震だ。20年ほど前までは地震の話題と言えば、今にも起こると言われていた首都圏直下型地震一色であった。しかし阪神・東日本大震災を経験し、首都圏直下型地震の話題はすっかり影を薄めたように思う。しかし地震は忘れたころに起きる。話題が薄れた今、人々の警戒感も緩み首都圏直下型の危険は増しているのではないかと思う。

今、南海トラフ地震が警戒されているのはその桁外れの大きさだ。東日本大震災もマグニチュード9という超巨大地震だったが、南海トラフも最大予測はそれに匹敵すると言われている。数年前まで話題にのぼらなかったのがウソのようだ。

日本に住んでいる限り火山と地震は切っても切り離されない。この様な話題は時には必要以上に煽られているようにも感じるが、人々に警戒感をもたらすという意味では非常に良いことではないかと思う。日本人である限り、頭の隅には少しでも火山・地震のことを念頭に置いておくことは必要だ。

米宇宙ロケット打ち上げ失敗

アメリカの宇宙ベンチャー企業スペースX社のロケットの打ち上げが失敗した。その前は別のベンチャー企業の打ち上げも失敗している。これはアメリカの宇宙政策の失敗につながるのではないかと僕は危惧している。

数年前、アメリカはNASAのスペースシャトルの引退を宣言し、今はNASAは独自の宇宙船を持たない。スペースシャトル事業からの撤退の原因は、船体の老朽化とコスト高からだ。そこでスペースシャトルの穴埋めの役割を期待されているのがスペースX社だ。

スペースX社に一番求められていたのは、スペースシャトルでの問題点でもあったコスト問題の解決だ。そのためスペースX社の開発はコスト的には安く抑えられているものと思われる。しかしコスト安を重視して打ち上げの失敗すれば元も子もない。最近のロケット打ち上げ失敗でNASAの宇宙政策は見直しを迫られるかもしれない。

今回の失敗の影響は日本にも多岐的に及んでいる。その中の一つが日本の大学が作った観測カメラの打ち上げだ。しかし用意周到だったというべきか、予備まで含めて三台用意していたそうだ。次の打ち上げで再挑戦することになる。

思えばスペースシャトルは世界の子供の夢であった。スペースシャトルをみて宇宙飛行士に憧れた子供がたくさんいたものだ。コスト重視で宇宙政策を見直すのも仕方のないことかもしれないが、宇宙政策に夢は必須だと思う。子供たちの宇宙への夢が次世代の宇宙開発の原動力になる。子供たちの夢を甘く見ないでほしいものである。