科学・数理(サイエンス)」カテゴリーアーカイブ

あけまして おめでとうございます

皆様、新年あけましておめでとうございます。気持ちのいい新年を迎えることができましたでしょうか?

年末には、サイエンスの世界では新しい元素の存在が認められ、新元素の発見者として日本の理研が認められたというニュースが入ってきました。新しい元素は113番元素、この元素の命名権は発見者の理研が保持しており、「ジャポニウム」という名前を命名されるといわれております。ジャポニウムとはすなわちジャパン(日本)の元素ということです。ジャポニウムの命名は数十年前から日本の悲願であり、やっとその念願をかなえることができそうです。

113番元素の発見者をめぐっては、日本の理研とアメリカ・ロシアのグループが争っており、新元素の生成数はアメリカ・ロシアのグループが圧倒的に多かったのですが、データの質の高さによって日本側の主張が認められたようです。

元素に国名がつけられた例では、キュリー夫人のポロニウム(ポーランド)が有名です。最近の新元素は不安定で瞬時に崩壊してしまうため、元素の存在の確認が非常に難しくなっており、元素の確かな存在を確認した研究者(グループ)に命名権を与えられることになっております。しばらくして発売される元素の周期律表を見るのが楽しみですね。

年末年始、日本人にとってこのような嬉しいニュースが飛び込んできましたが、今年も一年、嬉しいニュースやら悲しいニュースが数多く流れてくることと思われます。

皆様今年一年、良い年でありますように。

核融合実験に成功。新たなエネルギー供給源になるか

10日、ドイツのマックスプランク研究所の研究チームが、ヘリウムの核融合反応実験に成功したと発表した。とはいえまだ初期段階で、成功した核融合状態の持続時間は0.1秒だという。しかし短時間であってもできるとできないでは大違いだ。今回の実験成功は非常に大きな成果である。将来的には30分の持続時間を目指すという。30分持続できれば商用応用化への展望が開けるという。

では核融合とは何か?一言で言うと核分裂の逆反応である。原子力などの核分裂はウランが分解することによってエネルギーを得る。しかし核融合は原子が合体することによってエネルギーを得る。身近な例は、太陽である。太陽では水素の核融合反応によってヘリウムが生成されている。その時に発生するエネルギーが我々の地球に届いているのである。

核融合では放射性廃棄物が出ないなど、原子力に比べて大きなメリットがある。そして燃料である水素はいたるところにある非常に豊富な物質だ。しかし技術的には原子力をはるかにしのぐ難しさがある。核融合炉は人工の太陽だと言われている。

現在、高速増殖炉もんじゅの存在意義が非常に問われ、もんじゅは廃炉の危機を迎えている。もんじゅのプロジェクトは失敗であると言える。夢の炉と言われたもんじゅに取って代わって、これからは核融合炉に力を入れてくることだろう。どこの国が最初に核融合炉の実用化にたどり着くか、世界で激しい競争が行われることが予想される。

金星探査機「あかつき」、金星周回軌道投入成功

9日、JAXA(宇宙航空研究開発機構)の金星探査機「あかつき」が、金星の周回軌道への投入に成功した。5年の待機の末のことだ。

7日のブログで書いたように、僕は(僕自身の独断と偏見だが)今回のあかつきのミッションは失敗するのではないかと思っていた。耐用想定年数4年をすでに超えている、主エンジンは故障しているなど、あかつきにはあまりにも負の要素が強すぎた。しかし今回、僕のネガティブな思いに反して、あかつきは無事最初のミッションをクリアした。これはもう、JAXAの研究員・技術スタッフの賜物以外の何物でもない。

そしてさっそく、あかつきが撮影した金星の写真が地球に送られてきた。鮮明で大きな金星が写っている。あかつきの本当のミッションはこれから始まる。今やっとスタート地点に立ったところだ。これからあかつきは数々のミッションをこなし、多くの成果をあげることだろう。それに伴って、金星の謎の多くが科学的に解明されるかもしれない。最近はJAXAはいいこと続きだ。H2Aロケットの打ち上げ成功、そして現在進行中の「はやぶさ2」もミッションも今のところ異常なく小惑星へ向かっている。もしかしたら僕の知らない困難を多く抱えているのかもしれないが、ニュースにならないところを見ると、大きな失敗はないのではないかと思われる。

日本の宇宙開発・宇宙産業にとって、アメリカ・ロシアは大きな壁であると言われている。しかし日本のロケットの信頼性などは世界のトップだ。今、ようやく米ロのしっぽをつかみかけたところかもしれない。これからの日本の宇宙開発の成功を祈る。

金星探査機「あかつき」、金星軌道投入に再挑戦

5年前に打ち上げられ、金星の軌道投入に失敗した金星探査機「あかつき」が、5年の歳月を経て再び軌道投入に挑戦することとなった。5年前には主エンジンが故障し、金星軌道投入に失敗し、この5年の間に太陽の周りを9周した。今回の挑戦ではもちろん壊れている主エンジンは使えないので、4基の補助エンジンを20分間全開で稼働し、投入を試みる。

宇宙航空研究開発機構(JAXA)がどれくらいの成功率を見込んでいるかわからないが、僕の見聞きした個人的な感覚では、成功率はかなり低いように感じる。おそらく(JAXA)も半分はダメもとで挑戦しようとしているのではないか。

あかつきの耐用年数は4年であるらしい。しかしすでに5年の歳月が過ぎている。もし今回の投入に成功しても、すでに耐用年数を過ぎた機体を使うことになる。投入成功後、正常に金星探査のミッションが行えるかどうかも不安が残る。しかしもし軌道投入に成功し、金星探査の成果が上げられれば、窮地からの逆転勝利ともいえる。

軌道投入挑戦は、今日7日午前である。ミッション成功を祈るばかりである。


絶滅危惧種のDNA保存プロジェクト

現在、英国で絶滅危惧種のDNA保存プロジェクトが行われている。もちろんその目的は、一度絶滅した動物を、再生科学が発達した未来にもう一度よみがえらそうというものである。

地球では過去に5度の大量絶滅が起きたという。前回の大量絶滅では恐竜が絶滅した。そして現在6度目の大量絶滅が進行中である。

現在生活している我々は、現在大量絶滅が起きていると言ってもピンとこないが、大量絶滅は1日1年で起きるものではない。何十年・何百年かけて進行するものだ。何百年というと非常に長いように思えるが、地球の歴史数十億年と比べれば数百年など一瞬である。

そして過去の大量絶滅と現在の大量絶滅の決定的な違い、それは現在の大量絶滅の原因が99%人間によるものだということだ。人間の活動による乱獲・温暖化・大気汚染など、原因は複合的だが、全て人間由来のものだ。

もちろん現在絶滅に瀕している動物の生態を回復できればそれに越したことはないが、絶滅危機の多数の種を救うことは今の人間にはできない。苦肉の策としてDNA保存のプロジェクトが行われている。この領域まで人間が手出ししていいものかと考え込む人も多いだろうが、生命倫理は時代によって進歩(変遷)していく。数十年後にはDNA保存は当たり前のことだととらえられているかもしれない。さらに人間のDNA保存による人命再生なども行われている可能性も十分に考えられる。

生命科学にとって、科学技術と生命倫理は両輪である。科学の暴走を倫理が抑制する、そのように科学は発達してきた。ともあれ、個人的には今回のDNA保存プロジェクトに関してはかなり賛成である。100%とは言いきれないが。

2位じゃダメなんですか?

おなじみになった、民主党政権時の事業仕分けでの蓮舫議員の言葉。この発言のおかげで、科学は1位ではないといけないこと、そしてオリジナリティの重要性が広く国民に知れ渡った。そういう意味では蓮舫議員の発言は非常に重要であったと言える。

それにしてもこの発言のきっかけとなったスーパーコンピューター「京」、このコンピューターの維持費に年間130億円かかっているという。予算というものは無尽蔵にあるわけではない。ある研究に予算をつぎ込むと、他の研究予算が削られるわけだ。科学は1番でないといけないが、ただお金をつぎ込めばよい研究結果が出る訳ではない。そういう意味では予算の効率的な使い方を考えなければいけない。

もしかしたら、京コンピューターは極限まで効率を考えて、それでも130億円が必要なのかもしれない。しかし現在の京の利用用途は学術研究が主で、民間にはあまり活用されていないという。積極的に民間に貸し出し、使用料を上げることもこれからの課題であろう。

京は計算能力では今はもう1位ではない。しかしコンピューターの評価方法はいろいろな尺度がある。エネルギー効率だとか、あるいはコストで測るということもあるかもしれない。これらの多様な尺度で測った時、総合的に見て優れているということをこれからは目指すべきかもしれない。

イギリス、遺伝子操作細胞で白血病を治療

イギリスで、小児がん(白血病)の1歳の女の子に対して、遺伝子操作細胞という技術による白血病治療に成功したという。遺伝子操作という言葉には拒絶反応を起こす人も多いが、今回の治療の成功により遺伝子操作の有用性が一つ証明されたという。

今回の遺伝子操作細胞による治療は、生後14週で小児がんに侵された少女に対して行われたものであり、少女には終末治療しか選択肢がないと医者に宣告されていたところに、他の病院から治験、すなわち実験をしないかと持ちかけられたものだ。この技術には応用の余地は非常に大きいとみられており、将来の医療の大きな選択肢になるかもしれない。

この様に科学技術の発展は人々を助ける新たな手段となることが度々あるが、全ての科学技術が人々を助けるとは限らない。核兵器などは最たる例である。最近一番心配されているのはAI(人工知能)ではないだろうか。AIはもちろん人々の生活を支えるものとして開発されているが、AIが意識を持つようになるとどうなるか、想像に難くない。

科学技術というものはパンドラの箱であって、一度開けてしまうともう元には戻せない。僕には科学”技術”が、人類の破滅へと追いつめているような悪い予感を感じる。

量子テレポーテーションの実験に、NTT物性科学基礎研究所のグループが成功

今年の9月に、アメリカの研究所と日本のNTT物性科学基礎研究所のグループが、約100kmの量子テレポーテーションの実験に成功したらしい。

量子テレポーテーションとは、二つの離れた位置にある素粒子間の間で情報を瞬時に伝送する技術だ。この実験の鍵となるのが「量子もつれ(エンタングルメント)」といわれる現象だ。単に二つのどんな粒子間でも情報が伝送できるかといえば、それは無理だ。この二つの素粒子がエンタングルメント状態、すなわちもつれ合っていなければテレポーテーションはできない。今回の実験では100km離れた位置にある、お互いエンタングルメントされた二つの素粒子間で情報の伝達に成功したということだ。

ところで21世紀に入ってから、このエンタングルメント理論はブームともいえる発展を遂げている。これらの興味はもともと量子情報理論から発するものであるが、最近はあらゆる物理理論で応用がなされている。

その代表的な例が、Ryu(笠)-Takayanagi(高柳)理論とも呼ばれる、「ホログラフィックなエンタングルメント-エントロピー理論」だ。この理論は京都大学基礎物理学研究所の高柳匡教授が2006年に提唱された、日本発の理論だ。最近は素粒子論関係の研究で、この理論が盛隆を極めている。原論文はネット上で公開されており(英文)、僕も原論文を読まさしていただいた。この理論の特徴は、あらゆる理論のエッセンスが含まれていることだ。弦理論のAdS-CFT対応理論・重力理論・極小曲面理論、そしてエンタングルメント理論だ。

素粒子論・弦理論関係は、日本が非常に強い分野だ。2008年の南部・小林・益川の三氏がノーベル賞を受賞したのが記憶に新しい。それらの系譜に量子情報理論のエンタングルメント理論が合流した形だ。高柳理論がこれから先、ますます発展していくのか、頭打ちになるのか、予想できないが、カリフォルニア工科大学の大栗教授たちのグループがこの笠-高柳理論を利用して重要な結果を導いたとの情報もあり、これからこれらの分野から目を離せない。

iPS細胞の山中伸弥の目指すところは

MBSオンデマンドで、テレビ番組「情熱大陸」の山中伸弥iPS細胞研究所所長の特集を観た。ここ15年程、日本人研究者のノーベル賞受賞が続いているが、山中伸弥先生の存在感はその中でもまた別格の雰囲気を感じる。それはなぜか?その一つの答えが情熱大陸の中で見て取れたような気がする。

多くの研究者にとってノーベル賞は研究人生の頂点に違いない。しかし山中先生は違う。ノーベル賞は研究の通過点であり、これからのiPS細胞研究・医療においてノーベル賞受賞という肩書をいい意味でツールとして上手く使いこなしている。そういう意味で山中先生のノーベル賞の価値は、他のノーベル賞研究者のものよりも何倍も価値があるのではないかと感じる。

山中先生は今は研究者としてより、研究経営者としての役割を重要視している。彼の発見したiPS細胞研究をこれから発展させるには彼一人の仕事では大きく成し遂げられないことを山中先生は自覚している。そのため「研究経営」に徹して、より多くの研究者の力を利用してiPS細胞研究を大きく進めようとしているのである。

そして日本で生まれたiPS細胞の研究を、日本の技術として、メイドインジャパンとして大きく発展させたいという思いが山中先生にはある。

以前、山中先生は、iPS細胞研究において日本は1勝9敗だと言われていた。その1勝とは彼がiPS細胞を発見したこと。それからの発展においては全敗だということだ。

現在、iPS細胞の研究は国を挙げてオールジャパン体制で行われている。民間からの寄付も集まりつつあるという。そしてもうすぐ第三の研究棟が完成するという。日本発の発明で日本の技術として、これからのiPS細胞研究・技術が大きく発展することを願うばかりである。

欧米を追いかける研究と、追いかけない研究のバランス

ノーベル賞、化学賞も日本人、とはいかなかったが、連日の医学・生理学賞と物理学賞の受賞に日本がわいた。

ところで今回のお二方の研究は、研究結果の重要性はもとより、日本独自のオリジナリティが大きな評価の対象になったのではないかと感じた。物理学賞の梶田氏の研究は、岐阜県神岡鉱山跡にある「スーパーカミオカンデ」という実験施設が舞台になった。世界の物理界では巨大な加速器の建設競争が過熱し、加速器物理こそ欧米の研究の中心の一つともいえる。ところがスーパーカミオカンデは、地下に大量の純水を貯め、宇宙線粒子と反応した水が発生した微弱な光を検出するという非常に地味な実験施設だ。この様な施設は日本以外では(少なくとも僕は)聞いたことがなく、おそらくあまりにも地味すぎて外国では興味を持つ人がいなくて作られなかったのではないかと思われる。それに対して加速器物理は素粒子物理の華である。

とはいえこの地味に思えるスーパーカミオカンデは最先端の科学技術も取り入れられている。巨大な光電子倍増菅だ。純水貯蔵施設の壁にぎっしりと取り付けられている。この巨大光電子倍増菅は静岡にある浜松ホトニクスという企業の専売特許である。2002年の小柴氏の受賞時にも話題になった。

このカミオカンデのように外国が注目しない実験施設を作り、日本独自の研究を行ったことがオリジナリティの高さにつながり受賞に結び付いたのだろう。まさしく欧米を追いかけない研究の典型だ。

欧米中心の研究に取り組むことが悪いのではない。ただしそのような研究に取り組むならば後追いではなく先駆者にならなければ、単なるハイエナと呼ばれることになる。