ドイツ・メルケル首相の来日の意図

3月9日、ドイツのメルケル首相が来日した。なかなか強気の政策をする女性首相で、昔のイギリス女性・サッチャー首相を思わせる。

ドイツといえばまず思うのが、強い経済であろう。日本とドイツは共に第二次大戦敗戦国でありながら、今では共に世界有数の経済大国。今回の首相来日にも多くのドイツ経済界有力者が同伴していることからも、ドイツの経済に対する力の入れようがわかる。

ドイツは第二次大戦敗戦後、ナチスの反省のもとに反省外交も行ってきた。そこで今回の来日で発言された一つの言葉に気が止まった。

「隣国であるフランスが非常に寛容だった。」

と言われた。やはり地域として見ればやはりヨーロッパは思想が洗練されているのだろう。日本には日本の良き思想がある。しかしこれからは日本は国内だけではなく東アジア全体の底上げを支え、現実的な思想を洗練していかなければならないのではないかと思う。

そしてメルケル首相は東アジア、特に中国に関する政情に関しても言及された。ドイツと中国は強い経済的な結びつきがあり、ドイツにとって中国は主要な貿易相手であり、メルケル首相も今までに数度中国を訪問している。しかしその中国に対して、東シナ海、南シナ海における中国(国名は名指ししなかったが)の強権的な行動に難を示した。そのうえで、日本とドイツは国際法を厳守して行動することを強調された。

それから印象に残ったのが、ドイツの脱原発政策だ。メルケル首相は脱原発を決定したきっかけは福島の事故だと言われた。世界で最も先進的な技術を保持する日本であのような原発事故が起こったことが非常に衝撃的だったらしい。

もちろんドイツでは地震などほとんど起きない。地震や津波によるリスクは日本に比べて限りなく少ない。しかし東日本の出来事は、いつ何時不可抗力的な災いが起きるかわからないということを示し、他人事ではないと感じ脱原発を決定したらしい。ちなみに2022年までドイツ国内の全原発を停止することになっているそうだ。

ところで原発のリスクは地震津波だけではない。他国からの攻撃によるリスクは非常に大きいが、このことは日本国内ではあまり議論されることがない。実際紛争が起こると、攻撃の対象としてまず原発を狙うのが普通だろう。

もちろん原発の方も対策はしてある。原子炉はある程度の攻撃には耐えられるように設計されているし、僕が「高速増殖炉もんじゅ」に見学に行ったときには装甲車が駐留していた。指令室も特別な人しか出入りが許されない仕組みになっている。しかし本気で攻撃されたら、どんなに対策をしていても原発を壊滅させることはそんなに難しいことではない。すなわち日本は国内各地に爆弾を抱えているようなものなのである。

ところで病気で倒れた第一次安倍内閣の時のスローガンは「美しい日本」だった。確かに日本は国も文化も人間の所作もかなり美しいと思う。しかしドイツの現実的で、取るべきところは非常に厳格に処置をとる、そして徹底的に国民を守るという姿勢は日本も見習わなければいけない。

もちろん安倍首相は、最近の過去の首相に比べてかなり強固に物事を推し進めているように見える。しかしその原点が「国民を守る」というところにあるということを見失ってはいけない。

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