権利と義務

最近、シリア、そしてイスラム国への渡航を計画していた人に対する旅券強制返納が話題になっている。その人物(以下、氏と呼ぶ)は、行動、報道の自由を訴えかけて国を提訴すると言っているが、ここでこの問題について少し考えてみる。

この問題の核心は、「権利と義務のバランス」だ。行動、報道の自由があるのは言うまでもない。その一方で国は国民を守る義務がある。この二つの事柄は一部相反するところがあるので、今回はその部分が問題になっている。行動の自由があるとはいえ、殺害される確率が高いような危険地域に一国民が行くことを、国はみすみす指をくわえて見ているだけではいけない。後藤健二さんのケースでも、国はイスラム国に行こうとする後藤さんに対して再三警告したようだ。しかしそれを振り切って最悪の結果になった。

国としても同じ過ちを繰り返したくはないのだろう。後藤さんにしても氏にしても自己責任で行くと主張して行動しようとしている。しかし今回の人質事件を見ても、自己責任で済まされる問題ではない。と言っても何も後藤さんたちを、自己責任だと言って断罪するつもりはないのだが。

民主主義、自由主義国家において、行動の自由、報道の自由は通常は制限を受けるべきではない。しかし今回のイスラム国の渡航に関しては、生命の行方がかかっている。行動の自由と命の重さ、どちらが重いかというともちろん人命だ。

今回の旅券強制返納は特例らしいが、自由主義国家の日本としては苦渋の決断だったと思う。しかし国民の人命を第一に守る国だと示すためにも、しっかり決断してもらいたい。

 

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