巨大な組織力は、飛び抜けた個の力から生まれる

今日本で巨大な組織、あるいは巨大な産業と言えば、車産業・電気電子産業など様々あるが、その中の一つにロケット産業がある。ロケット産業は言うまでもなく巨大であり、非常にすそ野の広いプロジェクトである。そこに関わる組織はJAXA・三菱重工などをはじめ、重厚広大な企業から中小の町工場まで、すべてを把握するのは不可能であるとも言える。

しかしこの重厚広大な日本のロケットプロジェクトも、その原点をたどると糸川英夫博士のペンシルロケットにたどり着く。「ペンシル」と言う言葉通り、シャーペンほどの大きさの非常に小さいロケットだ。当時、この糸川博士のペンシルロケットを子供のおもちゃ同然とバカにする者も多かったという。しかしこのペンシルロケットの系譜上にあるのが、今日本の技術の最先端かつ巨大なH2Aロケットなのである。

この様に現在の日本の巨大ロケットプロジェクトは、糸川博士という一人の飛び抜けた個の力から生まれたのである。

どのような分野でも同じことが言えるのかもしれないが、科学技術の分野ではこのような歴史がいくつも生まれている。

20世紀の二大物理理論である、「量子力学」と「相対性理論」はその最たる例であろう。

量子力学は完全な個とは言えないかもしれないが、ボーア、ハイゼンベルク、シュレーディンガーといった個人の才能が大きな力になったことは言うまでもない。そして現在、科学技術と言われるほぼすべての技術に、この量子力学理論が応用されていると言っても過言ではない。

そして相対性理論に至っては、アインシュタインという大天才一人の力によって創造された。ここで相対性理論といった場合、一つ注意しなければいけない。相対性理論と呼ばれる理論は二つ存在する。1905年の「特殊相対性理論」と、1916年の「一般相対性理論」である。もちろん両方ともアインシュタインの個の力によって生まれた。特殊相対論の方は早くから応用され、特殊相対論なしでは科学理論は語れない。

しかし一般相対論は、あまりにも重厚広大すぎて、技術への応用はかなり遅れた。しかし現在ではGPSなどに使われるなど、しっかりと現在の科学技術に根付いている。

個の力は時には組織の力を大きく超えることがある。しかもブレークスルーは個の力から生まれることが多い。このブレークスルーを生み出すような個の力が生きていける社会を作り、維持することも、国家の役割ではないかと思う。

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